【農地プロジェクト】なるせ自然共和国
自然教育と農業の循環──渡邊さんが語る、持続可能な未来への一歩
土にふれ、いのちにふれる場を子どもたちに
三重県津市河芸町。のどかな山あいに、ひときわ静かな存在感を放つ場所がある。それが、渡邊さんが主宰する「なるせ自然共和国」だ。ここでは、放棄された農地と山林が整備され、子どもたちの“もうひとつの学び舎”として、自然と人、人と人がふれあう貴重な体験を提供している。
訪れた日は、青空がきれいで風が気持ちの良い日だった。背後では、かつての田畑が静かに息づき、自然とともに生きるリズムが、この土地の空気に染み込んでいるようだった。
「子どもたちが、自然と本気で向き合える場所をつくりたかったんです」
そう語るのは、渡辺硝子株式会社から派生した外構会社「ラフィーネ」の代表でもある渡邊さん。もともとはエクステリアの設計と販売を手がけていたが、住宅のコンクリート化が進むなかで、違和感を覚えるようになったという。
「見た目は整っているけれど、植物も無く、心が落ち着かない。自然とふれあわない暮らしに、どこか無理がある気がして…」
その想いから始まったのが、「なるせ自然共和国」だった。
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なるせ自然共和国 - 道の駅津かわげ近く、楽しく体験しながら本物を学べる野外学習施設
耕作放棄地を、“学び”のフィールドへ
なるせ自然共和国の特徴は、単なる自然体験施設ではない点にある。
もともと使われなくなっていた農地を自ら整備し、子どもたちが安全に活動できるよう環境を整えた。
ここでは「循環」を体感できる最先端の仕組みを導入している。
土壌の性質を見極めるために、自ら「SOFIX(土壌肥沃度指標)診断士」の資格を取得。土壌分析をもとに、微生物やこの土地に育つ草木などを利用した土づくりに活用している。
他にも、施設内に循環型の水洗トイレを設置。これは排泄物が微生物によって分解処理され、このコンテナの中だけで水が循環している仕組みだという。
「“自然のなかにおじゃましている”という感覚を持ってもらいたいんです」
子どもたちは、畑を耕したり、種をまき、草を刈り、収穫し、そして土に還す──そんな循環を実体験していく。
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SDGs目標6 安全な水とトイレを世界中に | アルコ株式会社
そこにキレイなトイレがあったなら・・。すごいトイレがありました!トイレで進む地方創生?ソフィール - 三重県に暮らす・旅するWEBマガジン-OTONAMIE(オトナミエ)
なるせ自然共和国では、定期的に地域の職人や専門家を招いたワークショップを開催している。屋外でのびのび 自然寺子屋アート鑑賞型対話、凧づくり、うちわづくり、左官などの伝承ワークショップ、植樹や剪定、じゃがいも植えなどの庭づくり、そのジャンルは多岐にわたる。
「地域には、まだまだたくさんの知恵や技術を持った人がいる。そういう大人たちと子どもたちが、年齢も立場も関係なく関わることで、自然と“共に生きる力”が育まれていくんだと思います」
ここでは、教える側と学ぶ側がはっきり分かれているわけではない。むしろ、子どもも大人も、誰もが「主役」になれるような関係性が築かれている。
「“誰かのため”じゃなくて、“みんなのため”の場所。それがなるせ自然共和国なんです」
「好き」や「違和感」から始めていい
渡邊さんの話を聞いていて印象的だったのは、「違和感が原点だった」と語る姿だ。
「私は兼業農家に生まれましたが、自ら農業をした事はありませんでした。ただ、小さい頃から採れたての野菜を食べさせてもらっていた事が、大人になってすごく贅沢な時間だったことに気がつきました。仕事を通して現代の暮らし方にモヤモヤしていて、“土っていいな”とか、“自然って落ち着くな”と思い、子どもたちにそれを伝えたい想いで、やれることから始めた。ただそれだけなんです」
その姿勢が、いま多くの人の共感を呼んでいる。特に、都市から移住を検討する若い家族や、自然教育に関心を持つ人々が、この場所を訪れているという。「大きなビジョンがなくてもいい。まずは“気になる”とか、“やってみたい”という気持ちで動き出せば、自然とやりたい事があふれてくると思います」
「農地LINK」ができること
渡邊さんのように、農地を活用した新たな試みを始めたい人と、農地を手放したい人をつなぐこと。それこそが、私たちの目指す「農地LINK」の役割です。
農業を始めたい人とやめたい人、その想いをつなぎ、地域の資源を循環させる。その第一歩を支えます。